モロッコでの婚姻証明書入手体験談―日本での婚姻手続きが先の場合
2009年にモロッコ人夫と日本で結婚し日本に数年間、夫と住んだ後、2016年に完全にモロッコに移住しました。
その後、2022年の現在に至るまで、婚姻証明証がないためモロッコでの滞在許可証の申請・発行に毎回、苦労を強いられました。
今回、6年かけてモロッコの婚姻証明証を取得するまでの経緯をまとめます。
状況概略
2009年
モロッコ人と日本で結婚
この時点で、おそらくモロッコにおける婚姻手続きは特に必要ないとの判断で夫がスルー
2013年
こどもが生まれ、モロッコのファミリーブックへの登録が必要なため、戸籍謄本などをアラビア語翻訳したものをモロッコのどこかの機関に夫が提出
2016年
モロッコへ移住
モロッコへ移住しようとも思っていなかったので、モロッコでの手続きは夫任せでモロッコへ移住
結果、モロッコへ移住した際、モロッコの婚姻証明書が手元になく、モロッコの滞在許可証が申請できない事態に。
2017年:最初の試練・不法滞在
2016年にモロッコに移住し滞在許可証の申請をするも、モロッコの婚姻証明書がないため申請できないと言われ、滞在許可証の申請ができませんでした。
とはいえ滞在許可証が取得できないとモロッコに長期滞在できないので、滞在許可証を申請するため、地元(ここではフェズ)の警察の指示どおり、ラバトの在モロッコ日本大使館へ行ったり、フェズの家庭裁判所に行ったり、何度も複数の警察に行ったりといろいろ手配しましたが、なにをやっても婚姻証明書がないと滞在許可証は申請できないと言われました。
ならば、「モロッコで1から婚姻手続きをすれば婚姻証明書をもらえるか」と家庭裁判所に問うても、すでに夫が戸籍上、結婚していることになっているため、モロッコでの婚姻手続きはできないと言われる始末。
駐日モロッコ大使館に確認したところ、
- 戸籍謄本のアラビア語翻訳
- 翻訳のアポスティーユ申請
- 駐日モロッコ大使館にてレターの発行&スタンプ
を行うように言われましたが、この一連の流れは、結婚して数年後、子供の誕生時にモロッコの戸籍謄本的なファミリーブックは申請した際にすでに行っているものでした。
※アポスティーユ=「外国公文書の認証を不要とする条約(略称:認証不要条約)」(1961年10月5日のハーグ条約)に基づく付箋による外務省の証明
そこでファミリーブックを地元の警察に持っていき、「これが証明にならないか」と問うも「ダメ」。
モロッコの機関に訪ねても埒が明かないので、ラバトの在モロッコ日本国大使館へ「ダメと言われたのだが、何を提出すればいいものだろうか」と相談したところ、「ファミリーブックがダメと言われるのは初めてのケースですね…」と言われ、何をしたら良いのか結局わからず…。
結局、「困るんだが。」と言って懇願して地元の警察からもらえたのは、紙切れ一枚の仮の仮のような滞在許可証でした。
この仮の仮のような滞在許可証は全くといっていいほど効力がなく、2017年に日本に一時帰国しようと出国しようとしたところ、不法滞在で出国NG。
チケット代約20万円がパーになりました。
とにかく、なんの書類が必要なのか誰もはっきりしたことがわからず、立ち往生。
とりあえず、2017年の日本への帰国は、臨時の出国許可証を警察に発行してもらいモロッコを出国しました。
そして夫は必要ないと言いましたが、念の為、日本で戸籍謄本をフランス語に翻訳しアポスティーユをもらったものをもってモロッコに帰国。
(モロッコでは、日本語からアラビア語翻訳をできる人はほぼみつかりませんが、フランス語からアラビア語翻訳できる人はいるため)
2018年〜2019年:ゴリ押し
今後、日本に一時帰国する際に、仮の仮のような滞在許可証では出国できないことはもうわかったので、再び滞在許可証申請のためにいろいろと奔走。
結果、戸籍謄本をアラビア語に翻訳したものを持ってこいと警察に言われ、モロッコの弁護士に日本から持って帰ってきたフランス語に翻訳した戸籍謄本をアラビア語に翻訳してもらい(やっぱり持ってきてよかったよ!)、プラス、フェズにおける有力者に口利きをしてもらい、なんとか1年間の滞在許可証を発行してもらえることになりました。
2019年夏
苦労して手に入れた滞在許可証もあっという間に期限切れ。
再度、滞在許可証を申請しなければなりません。
このときもモロッコの婚姻証明書がないと駄目と言われましたが、夫が「前回は、この戸籍謄本をアラビア語に翻訳したもので大丈夫だった」とゴリ押しし、3年間で申請しました。
通常でも申請から許可書のカード発行まで約3ヶ月。
日本に2ヶ月帰国する前に申請し、モロッコに戻り、申請から3ヶ月経ったくらいした頃に警察にカードを取りに行くも、「発行されていない」と冷たく言われることに。
今回は駄目だったのか…と怯えるも、さらに一ヶ月後くらいに取りに行くと、カードができあがっていました。
3年後に怯えながら、とはいえ、3年間は滞在許可証に振り回されることなく生活できることになりました。
2022年5月:再び奔走の始まり
あっという間に3年間の滞在許可証も期限切れ。
再び申請することに。
今回も夫が「前回は、この戸籍謄本をアラビア語に翻訳したもので大丈夫だった」とゴリ押しするも、「今回は絶対ダメ。必ずモロッコの婚姻証明書を入手してこい」と言われてしまいます。
なんでも同じように困っている外国人カップルが大勢いて、家庭裁判所のルールが簡単になったと言います。
とりあえず、夫と家庭裁判所に行くと、必要書類を集めるように言われました。
そして書類を提出し、1週間後、家庭裁判所の裁判官の前で、なにやら審査のようなことをされ、さらに1週間後来るように言われます。
2022年6月 : 発行3ヶ月以内の戸籍謄本の調達
1週間後、家庭裁判所に夫と行き2時間ほど待つも裁判官から呼び出されることなく、裁判官が退席してしまうことに。
怒り狂う夫。
事務手続きの場所に行くと、提出した書類のひとつである在モロッコ日本国大使館に発行してもらった婚姻証明書が古いので、新しいものを2週間後に持ってくるように言われます。
在モロッコ日本大使館に問い合わせると、発行は2営業日ほどあればできるが、発行から3ヶ月以内の戸籍謄本が必要だと言われてしまいます。
わたしが持っているのは、前回日本に帰国したときに発行した10ヶ月前の戸籍謄本。
ウクライナの戦争やコロナ渦での航空事業縮小のため、航空便が遅れている現在。
通常、EMSで送れば1週間ほどで届きますが、今はいつ届くか未定です。
なんとかならないかと懇願しましたが「ダメ」と言われ、慌てて日本にいる母に戸籍謄本を取得してもらいEMSで送ってもらいました。
なんとかギリギリ2週間ほどで届き、急いで夫はラバトの在モロッコ日本国大使館に新しい婚姻証明書を取得しに行きました。
2022年7月 : アラビア語の翻訳の用意
「在モロッコ日本国大使館が発行した新しい婚姻証明書があれば、あとは大丈夫なはず!」という夫のことばを頼りに、夫をモロッコにおいて2022年も日本へ帰国。
家庭裁判所に在モロッコ日本国大使館が発行した新しい婚姻証明書もって行った夫から不穏な連絡が…。
「日本の婚姻受理証明書をアラビア語に翻訳して、駐日モロッコ大使館のレターをもらう必要があると言われた」
ガクリ。
とりあえず、駐日モロッコ大使館にレターがほしい旨を伝えると、
- 婚姻受理証明書のアラビア語翻訳(ここで「受理」ということばがあると、ひっかかる可能性があるので、翻訳の際は訳さないように言われる)
- 婚姻受理証明書原本のアポスティーユ申請
- アラビア語翻訳とアポスティーユつきの婚姻受理証明書原本と翻訳証明書(きちんとした企業の捺印がないとダメ)を翻訳会社に綴じてもったものの用意
- 駐日モロッコ大使館にてレターの発行&スタンプ
という流れになると言われました。
またか…。
日本に帰国している間になんとかせねばならないので、急いで区役所に婚姻受理証明書を取得しに行き、アラビア語翻訳を依頼。
あわせて、外務省に婚姻受理証明書のアポスティーユ申請をしました。
2022年8月 : 委任状の原本と出産証明書のアラビア語翻訳
書類が揃ったと思ったら、今度は、駐日モロッコ大使館はモロッコ人のための場所なので、本来はモロッコ人の夫が申請しなくてはならず、日本人のわたしが依頼する場合、夫からの委任状の原本が必要だと言われてしまいます。
早速、委任状を用意してくれた夫でしたが、モロッコからEMSで送付すると1万円ほどかかると言うし(日本からだと3,000円ほどだった)、わたしが日本にいる間に日本に届くかも怪しい…。
幸い、夫の友人の奥様がモロッコにいて日本に近々に帰国予定とのことで、成田空港から委任状を送付してくださることになりました。
安いし早いしで、本当にラッキーでした。
(この場を借りて改めてお礼を言わせていただきます。ありがとうございます!)
さて、これで一安心かと思いきや、さらに
- 出生証明書のアラビア語翻訳
- 出生証明書のアポスティーユ申請
が必要だと駐日モロッコ大使館に言われました。
これも慌てて用意。
ちなみに、このアラビア語翻訳をするたびに1万5,000円ほどかかっています…。
2022年8月 : いざ、駐日モロッコ大使館へ
モロッコ帰国ギリギリに、駐日モロッコ大使館へレターをもらいに行きました。
ところが…。
すでに、以前、同じレターを発行しているからレターを発行できないと言われてしまいます。
ファミリーブックを申請した際に発行してもらったのがひっかかったようです。
事情を説明し、どうしてもレターが必要であることを切々と説明。
しかし、2度は発行できない、ファミリーブックがあれば、滞在許可証は申請できるはずだと言われてしまいます。
婚姻証明書とほぼ同じステップを踏んでファミリーブックを手に入れているので、もちろん、ファミリーブックを持って警察に何度も行きました。
それでもファミリーブックはなんの役にも立たなかったのです…と涙ながらに訴え、さらにモロッコにいる夫に夜中でしたが電話をかけ、モロッコ大使と直接話してもらいました。
なんとか、レターを発行してもらえることに。
そして帰り間際、今度は、
- 戸籍謄本のアラビア語翻訳
- アポスティーユつきの戸籍謄本原本
が必要だと駐日モロッコ大使館に言われました。
仕方ないので、また用意…。
2022年9月 : 再びモロッコの家庭裁判所
わたしが持って帰った婚姻証明書のアラビア語翻訳、出生証明書のアラビア語翻訳、戸籍謄本のアラビア語翻訳、そして駐日大使館のレターを持って、夫が再び家庭裁判所へ。
1週間後、二人で家庭裁判所に来るように言われます。
1週間後、再度、家庭裁判所の裁判官の前でなにやら審査のようなことをされ、2週間後、来るように言われます。
夫に言わせると、これでもうモロッコの婚姻証明書がもらえるはずとのこと!
そして2週間後…。
午前中、家庭裁判所で裁判官に呼ばれるのを待つも、またもや呼ばれず終了。
…と、裁判官のひとりからまた午後来るように言われました。
今度は夫だけ行けばいいようだったので、夫だけ裁判所に。
そして、とうとう夫から
「もう大丈夫!」
との電話が。
まだ婚姻証明書はもらえないものの、フェズの家庭裁判書の印がついた婚姻証明書はすでにできていて、これに最高裁判所の印が押されれば完了とのこと。
最高裁判所に印をもらうのに、さらに15日間かかるとのことでした。
ほんとにもらえるんかいな。
2022年10月 : 再びモロッコの家庭裁判所
指定された日に再度、夫が向かうも、まだできていないので次週、出直すように言われる。
…そしてとうとう、念願すぎる婚姻証明書をゲット!
しかし、なんだか、思っていたのと違う感じが…
若干、不安を感じながら、警察へ滞在許可証延長申請に。
ところが、家庭裁判所でもらった証明書をさらに弁護士事務所に持っていき、公式の証明書にしなくてはならないと言われる。
待つこと2週間…。
2022年11月 : 弁護士事務所
夫が申請し、完成した婚姻証明書を二人で確認し、弁護士事務所で二人でサイン。
想像していた婚姻証明書だったので、今度こそ大丈夫なはず!
その後、警察に行き、無事、この婚姻証明書で問題ないと言われ、手続きができました。
結論
何が起こったのか整理してみると、重要なことは下記2点に集約される気がしました…。
- 日本で先に婚姻手続きをした場合、モロッコに移住する予定がなくても、なるべく早くモロッコの婚姻証明書申請・入手必須
- 駐日モロッコ大使館のレターは必須
また、もしモロッコでの婚姻手続きを先にしようか、日本での婚姻手続きを先にしようか迷われているのであれば、モロッコの婚姻手続きを先にすることを心からおすすめします。
モロッコ現地では、結婚に数カ所の行政が絡みます。
”モロッコでの婚姻が先の場合の国際結婚の手続き”については各行政が把握しているようですが、”他国が先の国際結婚の手続き”については、各行政の把握がかなり不十分なようです。
それゆえ、各場所で滞ります。
申請する街によっても変わってきますが、基本、モロッコでの婚姻手続きを先にした方がスムーズなように思います。